私の副腎疲労体験記③

 

「とにかく、疲れる・・・」

 

立ってシャワーを浴びるのがしんどい、という症状が出てからというもの、症状はさらに多岐にわたり、悪化していった。

なんといっても一番の症状は、「疲れる」ことだった。

 

とにかく疲れる。

だるい。

朝起きられない。

なるべく横になっていたい。

日中眠い。

パワーが出ない。

頭が回らない。。。

 

もともと体力がある方ではなかったが、この疲れやすさは異常だった。

なんとか仕事はこなしてはいたが、座っていると頭が回らなくなった。

横になると、いつも通りに思考が働いた。

なので一時期は、患者さんを診察している時以外は、診察室のベッドに横になったまま仕事をしていた。

 

そんな状態で仕事をするのもつらいことだったが、もっとつらかったのは休日だった。

仕事がある日は気が張っているからか、何とかパワーが持つのだが、休日になると糸が切れたようにぐったりして、何もする気力がなく、ベッドに張りついたままで、ほとんど寝たきり

そんな状態だった。

 

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簡単に言うと、「疲れる」とは、活動するのに必要十分なエネルギーが足りない、ということの結果として、起こる症状です。

 

私たちが生きていくためには、エネルギーが必要です。

私たちの体は、グルコース(ブドウ糖)や、脂肪酸、ケトン体、アミノ酸などを、エネルギー源として利用しています。

それらの複合的なエネルギー源を、刻々と変化する体内の代謝の状況に応じて体が巧みに使い分けているから、私たちは生存することができるわけです。

 

中でも、脳が主にエネルギー源として利用しているのが、グルコース(ブドウ糖)です。
(*糖質制限時などでは、脂肪の代謝産物であるケトン体も利用します)

また、「瞬発的な力」を発揮する時に必要となるエネルギー源も、グルコースです。

瞬発的な力とは、運動する時ばかりではなく、ストレスに対して何らかの反応を起こすために使われるエネルギーだと思ってもらってよいでしょう。

その大切なグルコースの血液中のレベル、すなわち血糖値を(適度に)高める、という働きを主に担っているのが、副腎なのです。

副腎

ストレスにさらされると、まず自律神経のひとつである交感神経が反応して、交感神経の神経末端から「ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)」が、副腎髄質(副腎の内側)から「アドレナリン(エピネフリン)」が分泌されます。

そしてもうひとつストレスに対する反応系として、視床下部-下垂体-副腎系(HPA系)があり、CRH・ACTH等のホルモンを介して、副腎皮質(副腎の外側)から「コルチゾール」が分泌されます。

ストレス反応系

(図はコルチゾール研究会様よりお借りしました)

 

これらのホルモンに共通する働きが、「血糖値を高める」、また「血圧を高める」ということです(適度に)。

 

前回も書いたように、ライオンににらまれた、地震がきた、車に轢かれそうになった、などの生命の危機に直結したストレスの場合、戦うまたは逃げる(Fight or Flight response)などの、自分の身を守るための何らかの迅速な行動をとる必要があり、そのためのエネルギーとして、グルコースが必要となります。

生命の危機に直接的にはつながらないストレス、例えば、上司に怒られた、配偶者とケンカした、経済的な問題、なども、基本的には同じです。

それらに対応するには、適切にグルコースが補給される必要があるのです。

 

突き詰めると、ストレスとは「変化」のことです。

暑い・寒い、高気圧・低気圧などの環境的な変化もストレスだし、ネガティブなことだけがストレスになるのではなく、一般的に喜ばしいと思われていること、例えば結婚や昇進なども、変化という意味ではストレスになります。

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ある実験では、最適な環境、すなわち最適な温度、最適な量のえさ、塩分、水、適切な間隔での睡眠、過度の運動をせず感染がない、という環境の中では、ラットから副腎を両方摘出しても、明らかな影響は見られませんでした。

しかし、ただひとつでもこれらの環境要因を変化させると、ラットは死んでしまったそうです。

つまり副腎がないと、ほんのささいな変化にすら対応することができない、ということです。

 

私たちの生活においては、強いストレスが長く続いた場合、アドレナリンやノルアドレナリンの不足というのはそう簡単に起こらないとされているので、通常問題となるのは「コルチゾールの不足」です。

コルチゾールは、ストレスの初期段階では過剰に分泌され、それもまた問題を起こします(これについては後日書きます)。

とはいえ、コルチゾールが過剰に分泌されている期間は、人はハイパーな状態になっているので、きついながらも環境には適応できているのです。

その期間が過ぎて(人によりますが、数年~十数年くらいでしょうか)、コルチゾールの大量分泌に副腎が耐えられなくなった時・・・、コルチゾール分泌低下、すなわち「副腎疲労」となるのです。

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コルチゾールが不足すると、まず血糖値が下がり、低血糖になります。

これはエネルギー不足、つまり疲労感の基本的な原因とされています。

低血糖は脳機能を低下させるため、思考が鈍化してぼーっとしたり、記憶力が落ちて忘れっぽくなったり、わけもなく眠くなったりします。

集中力がなくなり、仕事の能力も低下します。

甘いものが異様に食べたくなったりします。

気分が落ちてうつっぽくなったり、悲観的になります。

 

また、血圧を適度に高く維持できなければ、低血圧になり、必要なグルコース等のエネルギー源を全身に供給できないため、やはり疲労感が起こります。

私のように、横になっていたら大丈夫だけど、座位や立位では血圧が維持できないため、頭が回らない、くらくらする、気が遠くなる、起きていられない、などの症状も起こる場合があります。

 

続きます。

 

 

と、ここで注意喚起。

 

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副腎疲労でグルコース(ブドウ糖)が低いからと言って、甘いものを食べるのはよくありません。

甘いものは、血糖値を一時的に上昇させますが、反応性にインスリンを過剰分泌させ、結果的に血糖値を下げすぎてしまい、そこでかえって副腎に負担をかけます。

このあたりの対策についても後日書いていきますね(いつになるやら・・・)。

 

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